2019年に始まったコロナ禍の中、人が触れる場所のアルコール除菌や手指消毒が当たり前になりました。従来の感熱紙はアルコールに触れると変色や発色部分が消えてしまうことで文字が読めなくなってしまうことがあったため、当社ではアルコールに触れても変化しない感熱紙の需要が高まると考え、開発をスタートさせました。以前よりアルコールに触れても変化しない感熱紙を設計する基本技術は社内に保有していたところも開発を後押ししました。
まず、耐アルコール性に影響する要素を、精密な実験から抽出しました。コストと品質(耐アルコール性)の観点から、抽出した要素に適切にアプローチを行い、コストと耐アルコール性能をバランスさせた設計を試行錯誤の末、見出すことができました。アルコールに触れた程度では全く変化せず、浸漬に堪えることのできる耐アルコール性能を持った感熱紙を開発できました。感熱紙としての一般的な保存性に加えて、アルコール(エタノール)やイソプロピルアルコールに限らず、アセトン、トルエン、シンナーなどの溶剤に対しても、白色部分の発色や印字部分の消色を抑える、高い耐久性を有しております。
本開発品は、医療用の検体管ラベル、耐溶剤ラベルほか各種用途等でのご利用が考えられます。また、粘着加工品につきましては、グループの王子タック株式会社にて対応予定です。これまで感熱紙の印字保存性が熱転写用紙に比較して劣るなどの理由から採用に至らなかった分野へもご提案が可能になると考えています。